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「うーん・・・」
「・・・歩けるか?」
頭から血をダラダラ流したまま舜治がおれに問。
「お前、何で生きてられんの?」
「・・・いや、実際意識がへんだ」
まぁ20人近くを相手にしたわけだしな。二人で。
勝ったには勝ったけど、代償が大きすぎる。
おれ、絶対肋折れたよ。
体ボコボコだし。
「電車乗れるか?」
「無理・・・」
「うーん・・・おれの部屋も無理だしなぁ」
「何でよ。ケチ」
「夢子いるんだよ」
夢子とは、舜治の彼女である。茶色く長い髪の同い年の子。
「アイツ、この間おれが血だらけで帰ったら失神しやがったんだよ」
「じゃぁ無理だな・・・」
そんな部屋行ったって迷惑かけるだけだし、何より、さっさと医者に見せなければ。
「連絡とってみるか・・・」
「いや、いいよ。一人で行ってやれよ。おれ、頑張って帰るから」
舜治は申し訳なさそうにじゃぁ、と片手をあげると、足を引きずって闇の中へ消えた。ずるずると、その場に腰を下ろす。
「ってぇ・・・」
明日学校行けるかな。骨折れてんだから無理か。
やば・・・頭クラクラする。
歩いて帰れるかな。
「あの・・・?」
舜治の消えた方から声が聞こえた。
弱々しい声。女の声だ。
「大丈夫ですか?」
首を縦に振る。他にする動作がない。横に振ったって相手が困るだけだ。
「血が・・・」
パチャパチャと、地面に水の落ちる音。
うっすら目を開けると、突然目元にハンカチを当てられた。
「ぅっ・・・!?」
「あ、ごめんなさい。血が目に入っちゃうかと思って・・・」
目をこじ開けると、髪の長い女の人が映った。
どこかで見たことあるような、そんな雰囲気。
「・・・夢子、さん?」
聞こえていないのかもしれない。女の人は何も言わずにペットボトルから水を流し、ハンカチに含ませる。
そして、そのハンカチをおれの顔に当てる。
もしかしたら舜治に話を聞いてわざわざ来てくれたのかもしれない。
優しい人だ。
「腫れてるから、押さえてて下さい」
「ん・・・」
「おうちに電話しましょうか?」
「ん・・・ありがと・・」
明日舜治にもお礼言わないと。
携帯をポケットから出してダイヤルを押す。手が震える。
おれの意識はそこでなくなった。
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