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「・・・なんだ、その幸せですって顔は」 隣に座る舜治が呟いた。 「なぁなぁ、お前彼女いる?」 「・・・それは僕の口からは・・」 「いるだろ」 「言うなよ」 「この間見たもん」 「もんじゃねぇよ」 知ってるなら聞くな。舜治は煙草を吸い込むとドーナツを作った。 「すげー。おれ、それできない」 「お父ちゃんにやってもらえ」 「お父ちゃんいねぇもん」 パタリ、と机に倒れる。 今日も昨日と同じ時間に電車に乗って学校へきた。 あの人とは会わなかった。 昨日気分が悪そうだったから、もしかしたら今日は寝ているかもしれない。 「舜ちゃん舜ちゃん」 「舜ちゃん言うな」 バチッと頭を叩かれる。 舜治は煙草に火をつけるとじっとおれを見た。 「・・・何?」 「お前、女に興味あったんだ」 「う?」 首を傾げる。 女に興味がないわけじゃないけど・・・別に考えなくても生きていけるし。 「今までそんなこと聞いてこなかったじゃん?」 「そぉ?」 ホワッとあの人の表情がよぎる。会いたいなって、思った。 「・・・興味とかじゃなくて」 「ん?」 「考えていたいだけ」 ぶほっと息を吐く音。その後で咳き込んだ声。 もう一度首を傾げると舜治は涙を流して笑った。 意味が分からなかった。 『○月◎日●曜日 今日も同じでん車にのったけど、あの人はいなかった。たいちょうがわるいのかもしれないからむりしないでほしいです。』 「・・・なんかさ、日記書いてるとドキドキするよ」 「そうか・・・」 「じーさんも一緒に書こうぜ」 「遠慮しとくよ。忙しいから」
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