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時間的には一分も経っていないであろう物思いから少年を現実に引き戻したのは、人の形をした炭が崩れる微かな音だった。
「…………」
確かに燃やし尽くした手応えはあったのに、何か違和感を感じる。そう、まるで……身近にいるのに姿はあらず、気配だけが存在を主張するような。
魔力の込められた白炎からは何人たりとも、逃亡する事が許されない。それは、少年自身が最も良く知っている。仮に逃げるような――目に見えない魂でさえも――気配があれば、即座に白炎が察知するからだ。
そして今度こそ逃げられないようにと、更に魔力を強めた少年に再び捕らえられ完全な滅びを与えられるのだ。
だが今回は物思いにこそ沈みかけながらも、紅き少年の瞳は白炎による刑執行を一秒たりとて逸らさず、周りや燃え逝く彼の動きにも注意を怠っていなかった。
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