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けれどそのおぞましい台詞も、寒気よだつ瞳にも何ら臆するどころか、呆れ果てた表情で少年は溜め息をついた。そして何事もなかったように大剣を背中の鞘に収め、彼であったモノに背を向けておもむろに歩き出す。
その行為を少年の油断か或いは、馬鹿にされていると思い込んだか定かではないが、彼であったモノは嘲笑と怨恨をない混ぜにした奇声を発しながら、紅き少年の背後へ手を伸ばした。
だが少年に触れる直前で、彼の動きは止まる。自主的にではない。動けないのだ。自身の力では抗い難い、何かに捕われている。まさか――と彼であったモノが悟るより早く、少年が足を止めて視線だけをこちらに寄越し、最終通達を突き付けた。
「だからてめぇは長生きの割りに、阿呆だってんだよ。オレ言ったよな?”魂まで燃やし尽く”すって。それは今のてめぇのような、残留思念だか亡霊だか知んねぇけど、例外じゃないんだぜ?一度白炎に標的にされた者は、例えオレが収めようとそいつを完膚なきまでに滅する迄、決して消えない。捕らえた者を逃がさない、絶対の死神だ」
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