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「……う……あ゛あ゛……や、やめ……」
少年の言葉に従うように、彼であったモノの足元から白炎が生じ、ゆっくりと正気すらすり潰さんばかりに、その身を覆っていく。
「だからさっきの時に、とっととくたばってりゃ楽に逝けたんじゃねぇかよ。無駄に足掻くから、それ以上の苦しみを味わうんだぜ?……ま、てめぇにゃそれがお似合いでもあるがな」
もう言う事はないとばかりに、少年は再び歩きだす。背後では怨みと苦悶の入り混じった声らしき音が耳に入ったが、少年はもう気にも止めなかった。
死神は囚人を逃がさない。今度はその思念すら塵芥とするまで、白炎は燃え続けるだろう。
白炎は少年が定めた者にしか、威力を発揮しない。万が一、人の目に触れようと火の玉だと思われるだけだろうし、火を恐れる野性動物はそもそも近付かないだろうが、誤って接触してしまったとしても心配はない。
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