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「……言い遺す事はないな?」
今、まさに彼に断末魔を与えんとする紅き少年が問う。
問いと云うよりむしろそれは、ほぼ頭ごなしの断定ではあったが。
「……」
紅き少年が断定するのも無理はなく、彼の喉元は少年の大剣により貫かれていた。常人であれば即死であろうそれは、彼の命を奪うに至っていない。仕方ないだろう。放っておいても彼は傷が自然に――致命傷であろうとも――塞がってしまうのだから。
それ故にこそ永年に渡り、彼による惨劇と悲劇は繰り返されてきたのだ。本人に自覚は薄いものの、紅き少年は数多たる被害者のひとりである。又、彼は少年にとって大切な育て親の赦し難き仇でもあった。
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