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一希の家に遊びに行く約束の週末、朝8時にまなちゃんの家で待ち合わせをして一緒にスクーターを飛ばした。
大きな自動車修理工場の前なので分かり易かったが、スクーターで15分はかかる距離だった。
天気のいい休日…風と木漏れ日が気持ち良い。何か楽しい事が起こりそう…
そんな気がした。
玄関前で二人そろって大きな声で
「おはようございま~す!」
「入っていいよー」
低い声が聞こえた…
一希の声だ。
引き戸をガラガラと開けると、すぐに目に入る茶の間で一希はテレビの時代劇を見ていた
一希はいかにも今風な雰囲気で、時代劇はどう考えてもミスマッチだ。
「おじゃましま~す!あはは、一希ってこういうの好きなの?」
「結構面白いよ」
人は見掛けによらない…
「ところで家の人は?」
「今日は夕方まで帰って来ないよ」
「そうなんだぁ」
何だか不安…
だって、彼が信用できる人だという理由は何もないんだから。
一希は自分の部屋に案内してくれた。
部屋のドアを開けると、右端にある机の上にパソコンを発見
あたしはパソコンに興味があったので聞いてみた
「パソコンやるんだぁ」
「おう、プログラム作ったり、たまにゲームもするけどね」
「どんなプログラム?」
「音楽作るやつ」
なるほど、部屋の左端では大きなアンプに赤と黒に塗り分けられたギターが寄りかかっている。
まなちゃんが
「スゴいねぇ~どんな曲を作るの⁉」
「グランジっぽいやつだよ」
あたしはグランジの意味が分からなかった。
「グランジって何?」
「パンクっぽいやつだよ」
横からまなちゃんが答えてくれた。
良く知ってるなぁ…
まなちゃんの家は呉服屋を営んでいて、その影響だろうか…とてもお洒落で流行にも敏感だった。今日だってバッチリとメイクしてきている。
あたしはスッピンなのに。
一希の彼女には、あたしよりもまなちゃんが似合いそうだなぁ…
…別に、いいけど。
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