コンプレックス1『チビ』

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聞こえてるよ。 そう言いたかったけど、俺は聞こえてないフリしてゼッケンを畳んでた。 だって、たぶんあいつらは俺に聞こえる様に言ってたと思う。 (もうバスケするな)(チビの立場考えろ)ってメーセージだったんじゃない? 少なくとも、俺はそう捉えてたけどね(笑) だからバスケが嫌いなの。 俺はバスケやったらいけない人種なんだって思い込んでた。   でもね。あの人は言ったんだ。   『バスケやろう』   って。俺は正直やりたくなかった。 また影で聞こえる様に文句言われるんだと思ってた。 何よりこの人に嫌われたくないって思ってた。 だからね、俺、必死に反対したんだ。暗いし、ボールないし………俺…チビだし…。 そしたら、あの人はこう言ったの。   「まぁボールが無いのは大問題だ。暗いのは何とかなるぞ?街灯あるし(笑)でも、チビは関係ないだろ。背が低くても活躍してる人だっているんだ。その人達に失礼だろ。」   って。 『背が低くても活躍してる人だっている』 その言葉が妙に胸に引っ掛かる。 『活躍』 チビでも頑張れる。 チビにしか出来ない事もある。 チビを活かす。   そう捉えたの。
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