コンプレックス1『チビ』

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俺が黙ったまま俯いて考えてたら、あの人が約束の1時間までまだ40分もあるし少し話そうって言ってきたの。   俺とあの人は近くのベンチに座って話し始めた。 そしたら、あの人が急に立ち上がり「ちょっと待ってろ」って言って走って公園から出てったの。 何だろ?って思ってたら、すぐ帰ってきたあの人の手には缶コーヒーが2つ。 体冷えるからって買ってきたらしい。 「ほら」って1つ貰ったの。 温かったなぁ。缶コーヒーも温かったけど、何よりあの人の心が温かった。 これが人間の温もりなんだ。 これが人間の優しさなんだ。 って。他人から優しくされたのは、イジメが始まって初めてだった。家族以外の人ね(笑) その缶コーヒーを握りしめたまま色んな話しをしたの。 家族の事。趣味の事。他愛もない話しに、あっという間に時間は過ぎてったの。 久々に楽しかった。帰りたくないとさえ思った。 けど、約束の1時間が経ち、あの人に家まで送ってもらったの。 で、帰り際に   「そういえば俺の名前知らないだろ?俺は坂本正樹。同姓同名だ。」   そう言って帰っていった。 坂本…正樹……。
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