喪失-Mistake because of love-

3/4
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「そう…ですか……」 手鞠さんは、優しく俺の頭を撫でてくれた。 まるで子供をあやすかのように。 「俺、この痛みは自分の咎だと思うんです。」 「咎?」 「無様にも生きてしまった俺への、咎です…」 「それは違うよ?雪乃。」 俺の虚ろな顔を覗きながら、手鞠さんははっきり否定した。 手鞠さんのまっすぐな瞳が、俺にはひどく眩しく見える。 「どんな形であっても、お前が生きていることを親御さんは喜んでくれているよ。」 「そんなわけ…」 「命というのは、尊いものなんだ。何をしたって、一人には一つだけだろう?失ってしまったからって、もう二度と取り戻せないものなんだ。」 「手鞠さん…」 「何があっても、命を簡単に投げ出したりしてはいけないよ?わかったかい?」 諭すように言った手鞠さんの言葉には、やけに説得力があった。 俺も、その迫力に押されつい頷いてしまう。 手鞠さんは、一度俺をきつく抱き締めてから、部屋をあとにした。 俺の部屋にはいつまでも、手鞠さんの香の匂いが漂っていた。 *** 「会いに来たよ…雪乃…」 次の日、また澪莉は俺を抱きにきた。 嫌なのに、顔を見ると何も言えなくなってしまう。 体がカタカタと震え、澪莉は不思議そうに俺を見た。 「なぜ震える?恐ろしいか、俺が。」 慌てて首をふった。 機嫌を損なわせない方が、後々いいに決まっている。 「お、お待ちして、おりました…」 手鞠さんが言っていることが正しいのならば、澪莉は俺を守ってくれている。 少しでも長く通ってくれれば、その分こんな気持ちにならなくてすむ。 「可愛いな……いっそ、買ってしまおうか。」 願ってもない言葉だったが、やはりこの男への恐怖は消えなかった。 夕べの出来事が、頭から離れない。 どんな相手だろうと、性交をするのは変わらないのだろうけど。 「今日は、口淫してもらおうか。」 目の前に晒されたそれは、すでに硬く大きくなっていた。 緊張にゴクリと喉がなる。 そっと手を添え舌を這わすと、むんと青臭い臭いが漂った。 それは苦く、あまりの圧迫間に生理的に涙が零れた。 「美味いか?」 「…ふぁい……」 澪莉はふふ、と不適に笑みを浮かべた。 そして、酷く優しく、俺の頭を撫でた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!