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「そう…ですか……」
手鞠さんは、優しく俺の頭を撫でてくれた。
まるで子供をあやすかのように。
「俺、この痛みは自分の咎だと思うんです。」
「咎?」
「無様にも生きてしまった俺への、咎です…」
「それは違うよ?雪乃。」
俺の虚ろな顔を覗きながら、手鞠さんははっきり否定した。
手鞠さんのまっすぐな瞳が、俺にはひどく眩しく見える。
「どんな形であっても、お前が生きていることを親御さんは喜んでくれているよ。」
「そんなわけ…」
「命というのは、尊いものなんだ。何をしたって、一人には一つだけだろう?失ってしまったからって、もう二度と取り戻せないものなんだ。」
「手鞠さん…」
「何があっても、命を簡単に投げ出したりしてはいけないよ?わかったかい?」
諭すように言った手鞠さんの言葉には、やけに説得力があった。
俺も、その迫力に押されつい頷いてしまう。
手鞠さんは、一度俺をきつく抱き締めてから、部屋をあとにした。
俺の部屋にはいつまでも、手鞠さんの香の匂いが漂っていた。
***
「会いに来たよ…雪乃…」
次の日、また澪莉は俺を抱きにきた。
嫌なのに、顔を見ると何も言えなくなってしまう。
体がカタカタと震え、澪莉は不思議そうに俺を見た。
「なぜ震える?恐ろしいか、俺が。」
慌てて首をふった。
機嫌を損なわせない方が、後々いいに決まっている。
「お、お待ちして、おりました…」
手鞠さんが言っていることが正しいのならば、澪莉は俺を守ってくれている。
少しでも長く通ってくれれば、その分こんな気持ちにならなくてすむ。
「可愛いな……いっそ、買ってしまおうか。」
願ってもない言葉だったが、やはりこの男への恐怖は消えなかった。
夕べの出来事が、頭から離れない。
どんな相手だろうと、性交をするのは変わらないのだろうけど。
「今日は、口淫してもらおうか。」
目の前に晒されたそれは、すでに硬く大きくなっていた。
緊張にゴクリと喉がなる。
そっと手を添え舌を這わすと、むんと青臭い臭いが漂った。
それは苦く、あまりの圧迫間に生理的に涙が零れた。
「美味いか?」
「…ふぁい……」
澪莉はふふ、と不適に笑みを浮かべた。
そして、酷く優しく、俺の頭を撫でた。
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