第二章

2/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
受験生とは言っても、そんなに大変でもないのよ。別に行きたい高校なんてないし…。クラス内でも、たまぁに高校の話をするくらいで、みんなも別に意識してないみたい。 部活動も、中総体までのあと1ヵ月となったし。先輩のいない部活なんて――はっきり言って、全然おもしろくない!!   『ちかっ!素振り、素振りっっ』 あ…ごめんっ、そぉだった、素振りしてたんだっけ。今、私の名前呼んだのは同じ部の杉本五月ちゃん。一年の時、ここの部に入ってからのお友達なんだけど、今ではすごく仲良しっ。頭が良くてスポーツもできる。今うちの部の主将で、誰にでも優しくて、しかもかわいいっ!さっちゃんは、私の自慢の友達。そして私の目標でもある。   『あ、先生が来たっっ』 その声で、再び我に返った。うちの部の顧問は、とてもすごい名前を持っている。“田中厳増”と書いて“たなかげんぞう”…その名の通り、とても厳しい先生である。しかもその“厳”が、なおさらの事“増す”のだから恐い。   ━━練習中に先生が来ると、必ず1人は犠牲になる。 『みんなっ、ちょっと集まれー』 ほぉらっ!!きたきたっっ。少しでも先生の気にくわない打ち方とかすると、この部員のうち誰か1人が見本となって先生の技(わざ)を受ける。技の中でも特にコテなんて、打たれたその日から3日間は、ずっと腫れがひかない。   ━━あぁっ、神様!どうか私に当たりませんようにっっ━━ みんながきっと、そう願ってるに違いない。 『ん…んじゃぁ、ちょっと、お前来い。』 先生の鋭い指先は、ある1人の男子を指さした。…ほっ。良かった。今日のいけにえは男子か。 『おまえら、ちょっと最近コテの打ち方が悪いぞぉーっ』 コ…コテ…ねぇ。 ビシィ―――~ッッ うっ、うわぁっっ!痛そぉーっ。かわいそうに、この子。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!