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3時間にわたる、ぶっつづけの練習が、やっと幕を閉じた。
『もぉクタクタだよ、ねぇ』
と、さっちゃんが話しかけてきた。この練習で汗をかかない人は、不死身だと思う。
『うん…』
私はもう気力が抜けてきていた。まるでキの抜けたコーラみたい。ぬるくて、甘くて、飲まれる気なさそうな感じが似てる。
あ!そういえば、さっきの男子…誰だったんだろう?
………
『げっ…』
━━私は一瞬、息がつまった。
だってねっ、さっきの犠牲者くんって、私のイヤな子だったんだもん。なんだか分からないけど、私の顔見るたびイヤそうな顔したりイヤミ言ったりするのよっ。だから、だったらこっちも…って事。紺野まことって言ったっけかな?コイツの名前。紺野は2年生。私より1つ年下って訳よ。けど、時には私よりしっかりしていて、“ほんとにコイツ14才~!?”って、“やっぱり男の子なんだなぁ”って、思う。
夕日の光が紺野の面(めん)に、差しかかってた…
右面と剣先に、光が集まってるように思えた。
面の奥に揺れる瞳…あ、笑ってるっ。とても優しい目。夢と希望に満ちた瞳っていう感じ。
『あぁ…』
私、つい見とれちゃった。
きっと、この夕日のせいだと思う。と、その時、紺野がこっちを見た。
『ぶす。』
な、な、な、な、なによぉぉっ!
まったくもぉ――っ!かっ、かわいくないのっ!!ふんっっ。
年下のくせにっっ、私は先輩よっ!先輩っ!!!
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