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「じゃあそろそろ、俺帰るね」
学校の決まり事でこのアナウンスが流れると児童は家路に着く規則である。
暗くなる時間帯、防犯上の関係もあるが、大人には夕飯時にいつまでも居られては困る、という事情もあるのだろう。
そのことを知っていたスノは引き留めることはしなかった。
「気を付けて帰ってくださいね」
コートを羽織り、ランドセルを背負い、ポケットから手袋をはめる。
「セツくん、マフラーはどうしたのですか?」
「朝、急いでて忘れた」
「そのままじゃ冷えてしまいますね」
「大丈夫だよ。走って帰るから」
「そういうわけにはいきませんよ。ちょっと待っててください」
そういってスノは早足に屋敷に入り、マフラーを持ってきた。
柔らかな風合いの真っ白なマフラーだ。
「風邪なんて引いたら大変ですからね」
ニッコリと微笑んだ。
「ゴメン。ありがとう」
ふわりと巻かれたマフラーの温もりに、セツは思わず顔を綻ばせた。
「これではまるでスノードロップですね」
「――?」
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