無 色

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  二月の中旬。   下校時間。 城井セツは昇降口の前で、今にも雪が降り出しそうな、どんよりとした灰色の空を見上げて、大きな真綿のような白い息を吐いた。 肌を突き刺すような冷えた空気に思わず肩を竦めて、小さく身震いする。 背負った六年間使っているランドセルの中身が、カタカタと音を立てた。 登校時、慌てて家を出てしまったため、うっかり忘れてしまったマフラーを今更のように後悔し始めた。 襟首の長い服装だから大丈夫だろうと思ってしまったのだが、確実に首元が冷える。 かじかむ冷たい手を保護するように、手袋に押し込むが、アカギレの指先が手袋に入れた衝撃でジンと痛んだ。 セツは小さく舌打ちをして、帰っても一人の明かりのついていない、――ましてや暖房の効いていない家に帰ることを思うと気が重くなってしまった。 ――今度、雪が降ってきたら面白い話をしてあげますよ。 ふと、彼の言葉を思い出した。  
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