無 色

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  去年の夏の終わりに知り合った、近所では有名な大きな温室があるお化け屋敷に引っ越してきた変わり者。 ショジジョウでただいま失業中の不思議な大人は、いつも柔らかな微笑みを浮かべて、最近当たっている天気予報を自分の手柄のように自慢してそういった。 (なんだかあの人、いつも子供っぽいんだよな) セツはため息交じりに微笑み、空を見上げた。 (すぐ家に帰っても誰もいないしな……それに、あの人の所だったら暖かいし) 母親とも顔見知りだから、多少寄り道して帰るのが遅くなっても心配はされないだろう。 そうして、いつの間にか日課になっていた、少しだけ遠回りになる帰り道に足を向けたのだった。 *** セツの家から少しだけ遠回りの、町はずれにある大きな屋敷。 随分と前から住人がいないのか、鉄製の門扉から覗く庭に雑草が伸び伸びと茂っていたのは去年までの話。 「スノさん、そこで何してるの?」 いつも開いている門からひょっこりと覗き込めば、今ではきれいに整備された花壇のそばに白い影を目撃して声をかけた。  
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