無 色

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  「寒くなってきましたし、とりあえず中に入りましょうか」 スノがどうぞと促した先は屋敷ではなく、広い庭の隅にある大きな温室であった。 一日の大半をこの場所で過ごしてるのではないかと疑いたくなるほど、生活感が滲み出ている室内である。 寒さに弱い観葉植物と、食用ハーブなどの鉢植えが敷地の半分を埋め尽くしているが、もう半分は何かの作業が出来るようにと、テーブルとイスが置かれている。 簡易式のキッチンが設置され、その横には小さな棚がある。 その中には彼愛用の透明な硝子のティーポットとカップが収められていた。 ** 砂時計の砂の粒が落ち、注がれる褐色の紅茶は芳しい。 「ねぇ、そういえばこの前言ってた雪の話ってなに?」 ティーカップに淹れられたジンジャーティーの味が、ポカポカと冷え切った身体には有り難かった。 紅茶の味なんてどれも同じだと思っていたセツだ。 けれどスノが淹れてくれた紅茶は深い色でありながら、渋くなく、丁寧な味がした。    
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