無 色

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  「あぁ、雪の話ですか。そうですね、ちょうどスノードロップの花も咲いたことですし――」 そこでスノは言葉を切った。 お茶請にと用意されたフィナンシェに手を伸ばしたセツの手を、じっと見ている。 「さっきから気になっていたんですが、セツくん、薬塗ってますか?」 「今日は塗るの忘れた」 「アカギレがひどいですね。お母様が仕事で忙しくて、お家でのお手伝い頑張ってるんですね」 そういいながら、いつの間にかセツのために常備薬になっている軟膏をポケットから取り出す。 ひんやりとしたスノの細い指が、赤く熟れた手を労うように、そっと優しく塗り込んでくれた。 「――ありがとう」 なんだか気恥ずかしい。 スノが当たり前のようにするので、セツはいつも自分で塗るタイミングを逃してしまう。 「そうそうセツくん。知っていますか? 雪はね、むかし、色がなかったんですよ」    
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