263人が本棚に入れています
本棚に追加
突然届いたそのメールの内容は明らかに不信だった。
親に携帯電話を持たされて一カ月。
知らない人間に番号やアドレスを教える訳もない。
一体どうやって私のアドレスを知ったのか?
本当にそれだけだった。
それを知りたいだけ。
相手がどんな人なのかなんてこれっぽっちも興味など無かった。
だけど、その人は案外普通の人で、気づいたらメールを続ける自分がいた。
【あなたは一体どうやって私のアドレスを知ったんですか?】
すると30分程で最初の返事はやってきた。
【それは言えない。ごめん。
でも安心して。怖い事はないから。僕はただ、君とメールをしたいだけ。どうかな?やっぱり嫌?】
不思議と嫌悪感は無かった。
寧ろこんな私にメールをくれた事が嬉しかった。
地味で何の取り柄もないこんな私に。
【嫌じゃないけど…何で私なの…?】
そう返事を返すと、小春は携帯を閉じ、机の傍らにそっと置いた。
置いておいたシャーペンを握り、教科書に視線を落とす。
毎日の復習は欠かさない。
人よりおっとりしていて、なかなか周りに付いていけない私は人一倍努力が必要だと分かっているから。
それにしても、驚いた。
いきなり届いたメールの内容は、からかわれているとしか思えない。
いくら私でもそんな冗談は笑えない。
一カ月もかけてやっと使いこなせる様になってきた携帯を眺めながらそう思う。
もともと携帯を持つ気も無かった私に両親は半ば無理やり与え付けた。
鈍くさい私を心配しているらしい。
今度返事が来たら、ちゃんと断ろう。
ーーーピピピーーピピピー…
一時間後、鳴り響いた携帯の着信でウトウトとしていた瞼をこすりながら意識を取り戻す。
…あれ…寝てた?
時計を見ると、教科書を開いてから二時間が過ぎていた。
うっかり忘れそうになりながら携帯を開いてみる。
届いていたメールの知らせで思い出す。
…そうだ…ちゃんと断らないと。
受信ボックスを開くとやっぱりあの人からだった。
【言ったでしょ?君の事が好きだから】
心臓の刻むリズムが少しだけ早くなる。
誰も居ないこの部屋で無意識にも体温が上がる感覚を覚えた。
本気にしちゃ…ダメなのに…
最初のコメントを投稿しよう!