529人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はやっと彼女に追い付き、彼女を捕まえました。
その拍子に彼女は横むけに倒れこみ、僕は、その上に覆い被さる形になりました。
「どうして逃げるの?もう僕を愛していないの?」
「何故、私があなたを愛さなきゃならないの?ほんとにあなたのことなんか知らないのよ。助けて!お願い!」
彼女は目に涙を浮かべ、僕に顧願しています。
どうやら、本当に僕のことを忘れてしまっているようです。
忘れてる?
綺麗サッパリ忘れた?
どうやって?
僕はそのときピンと閃きました。
そうだ・・・
それしかない
僕との記憶を
売ったとしか思えない。
彼女は僕との思い出を、お金に変えたのです。
許せません。
僕は、倒れた彼女に乗り掛かり、そして顔を近づけて言いました。
「何故?どうして言ってくれなかったの?」
彼女は怯えながら聞き返しました。
「な・・・何を?・・何を言ってるの?」
「いいんだよ。隠さなくても。僕とキミとの仲なのに。言ってくれればよかったのに。お金がいるならいると。」
「何?どういう意味?」
彼女の怯えた目から、涙がこぼれました。
柔らかい唇がプルプルと震えていました。
僕はそんな彼女がいとおしく思え、そのまま、彼女の唇に自分の唇を重ねて押し付けました。
やっぱり。
最初のコメントを投稿しよう!