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僕は両手で彼女の喉を締め付けながら、何度も何度も彼女の唇の感触を味わいました。
幸せです。
今日の彼女の唇の感触は今までで一番、リアルで、一番柔らかく、素直に僕を受け入れてくれました。
ついに彼女は、抵抗する力を失い。
どんどん唇が冷たくなっていきました。
「やっと、思い出してくれた?」
僕は抵抗しなくなった彼女を抱き起こし、ギュッと抱きしめました。
彼女は体の全てを僕の腕の中へ預けて目を閉じています。
そして、彼女を抱えあげ僕は彼女のマンションへ連れてかえりました。
彼女のカバンから鍵を取り出し、オートロックを解除し、エレベーターで部屋へ向かいます。
何度も通った部屋です。
彼女が何も言わなくても、僕は彼女の部屋がわかります。
ドアを開けて中へ入り、ベッドへ彼女を寝かせました。
服を一枚一枚優しく脱がせてあげました。
今、彼女が着けている下着も、僕が買ってあげたものです。
その下着も外して、僕も、脱ぎます。
「さぁ、目を開けていいよ」
僕は彼女に囁きました。
彼女は何も反応しません。
「そっか、いつものように、電気を消さないとね」
部屋の電気を消して、枕もとのスタンドの電気をつけました。
「これはつけてもいいよね?じゃないとキミの幸せそうな表情まで見えなくなるから」
彼女は返事をしません。
「どうしたの?」
僕は、全く動かない彼女を不思議に思いました。
「ねぇ、大丈夫?」
僕は彼女を揺すりました。
それでも全く反応がありません。
「ま、・・・まさか・・・しん・・で・る?」
僕は青白く冷たくなった彼女の頬に手を添えました。
そのとき僕は気付きました。
彼女の首に、赤紫色をした、指の跡がくっきりと浮かびあがっていました。
「・・・。僕が、やったんだ」
「まさか、死ぬなんて・・・うそだろ?」
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