6, アンインストール(長)

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僕は、自分の両手を眺めました。     確かにはっきりと、彼女の細い首の感触が残っています。     「うそだ!      うそだうそだうそだ!      違う!僕はやってない!  違うんだ  彼女に思い出してもらい  たくて。うそだ!」     僕は急いで服をを来て、彼女の部屋を飛び出しました。     マンションから自分のアパートの部屋まで、僕は全速力で走りました。     部屋入って、水を飲み、思い返してみました。         間違いなく。僕がやったのです。     今でも、彼女の首の感触と、冷たい唇の柔らかさが僕の全身によみがえります。       今、意外に冷静なのが不思議です。       今なら、全てを理解することができると思います。     どこまでが本当の自分の記憶で、どこからが他人の記憶なのか。     僕は、初めてあの老人の店に行った日、冗談半分で、他人の記憶を買いました。     それがきっと『彼女との出会い』です。     僕はその想い出の続きを味わいたくて、それから幾度かに分けて他人の想い出を買い続け、自分の想い出に変えていったのです。     僕の本当の私生活と、彼女との想い出が入り交じっているのはそのためでしょう     そして、完全に自分の想い出に変えた僕は、その本当の想い出の持ち主に成り代わってしまったのです。
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