529人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女が僕を知らないのは当たり前です。
なのに僕は、そんな彼女に逆上して・・・
遂には、この手で、絞め殺してしまったのです。
僕が、お金で買わずに得た彼女との唯一本物の想い出が・・・
まさか、こんなとんでもないものになるなんて。
もし、この想い出を売れば、いくらの値がつくのでしょうか。
時給900円を越えるでしょうか。
しかし、この想い出を売るわけにはいきません。
僕はこの唯一の想い出を胸に、僕はこれから、死にます。
僕の人生っていったいなんだったのでしょうか。
さようなら
上田 雅人
~~~~~~~~~~~~~~
「警部、読まれましたか?」
若い方の男が、もう一人の歳上に見える男に話かけた。
「ああ、なんなんだ?これは。わけがわからんな」
警部と呼ばれた男は、『遺書』を読み終え、自分の頬から顎の辺りをさすりながら答えた。
軽く伸びかけの無精髭がこすれてジョリジョリと音をたてた。
「まったく、不思議な話です。」
と、若い方の男が険しい表情で首を傾げてみせる。
「ああ、最近の若者の想像力ってのはどうなってるんだ。記憶を売るだの、買うだの、完全に妄想だな。そして、その妄想と現実の区別がつかなくなり、マジで人殺しをやっちまったって話だろ?」
「はぁ、まぁ。そうなんですが・・・」
若い方の男はまだ、納得いかないようである。
「なんだ?これが他殺だと思うか?どうみたって自殺だよ。他になにか引っ掛かる点でもあるのか?」
警部は若い男の表情に気付き、問いかけた。
「実は・・・」
最初のコメントを投稿しよう!