7, 天才発明家『三浦』

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俺と三浦、そして残りの4人は小学校のころよく発明ごっこをして遊んでいた。 発明とは言っても小学生のやることで、しかもしょせんごっこはごっこだ。   なんの科学的、物理的根拠もない。 あるはずがない。   例えばそれがどんなものかというと、     ある日、6人のうち1人が壊れたラジコンのコントローラ―だけを持ってきて   「新たな発明に成功した。これは人を自由に操れる装置だ」   と言い出す。   そうなれば、もうその日はそれがまかり通ると言うのが俺達の暗黙の了解である。   勿論、例の6人だけに通用するルールだ。   授業中、先生が   「これ解る人?」   と言ったとき     「吉田は手を挙げる」と言いながらコントローラを向けられると解らなくても手を挙げなければならないなどといういかにも子供染みた遊びだ。   ときには悪のりが過ぎて先生に怒られるようなこともしばしあったが、大怪我をするようなことは子供ながらに暗に控えていた     そのなかでも三浦は少し変わっていて、人の発明に   「それは理論的に無理があるんじゃないか?」   とケチをつけるくせに、三浦の発明に他のだれかが   「こうしたほうが面白いんじゃない?」などと言うと   「僕の発明に欠点はないよ」   と、あからさまに不機嫌になる。   あるとき、誰かが『タイムマシーン』を発明したと言い出した。   そのときも三浦は   「俺もそれは一度考えたが、無理だってことに気がついた。だからタイムマシーンは無し」   と言った。   それを言ったら子供の遊びは全てが成立しなくなるのだが、三浦はそのあとコンコンとタイムマシーンがなぜ駄目なのかを説明していた。  
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