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「これは、過去や未来には行けないタイムマシーンだ」
三浦は胸を張って言い切った。
「それでお前の話が終わりなら帰らせてもらう」
俺は真剣にそう思ってそのまま口にした。
「まてよ。このまま終わって誰が納得してくれるんだ?」
誰がと言われても・・・
こいつは誰にむけて話をしてるんだ?
「続きを話そう」
三浦が神妙な口ぶりで言った。
「さっさと言えよ」
俺は段々どうでもよくなってきていた。
「まずこれだけはハッキリ言っておくぞ。どんなことがあっても時間軸を越えて未来には行けない。なぜかというと、『未来』はまだ存在していないからだ。未来とは幾通りもの可能性のなから一つに絞り込んで作って行くものなんだ。俺たちの未来はまだ決まっていない。そんなとこに行けるか?・・・無理だろ」
「それはお前の思想だけのはなしじゃないのか?知らないだけでもう決まってるかもしれないぞ?」
とまで言って俺はあわてて口を塞いだが既に遅い。
聞き役に徹して、話を早く進めようとしていたのについ口を挟んでしまった。
「吉田くん、それは違うよ」
予想通り、三浦は嬉しそうに上からの視線を俺に送り、反論してきた。
三浦は普段、俺を『吉田くん』とは呼ばない。
彼は完全に人を見下したときに、相手に『くん』を付けて呼ぶ癖がある。
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