人間カレンダー

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人間カレンダー

人は皆生まれた時から、死に向かって歩き始める いつまで歩くのかは運命にしか解らない            「もう、桜が咲き始めるんだね」 俺は、近くで見守る彼女に呟いた 病室の窓から見える桜の木が色付き始めた 俺が、この病院に来て、もう一年になる 一昨年の今頃は、高校の入学式に胸を弾ませていた 友達も沢山できて、その年の夏休み前には憧れの彼女と付き合い始めた 二人で海に行った時、初めてのキスで君は少し震えていたね 花火大会で浴衣姿を見た時は、とても綺麗で眩しかった 学園祭の練習で、君が吹いていたフルートの音色が今でも耳を離れない ごめんなずっと傍に居れなくて ごめんなこの先、君を守れなくて ごめんな、俺のカレンダーは他の人より早くめくれてしまうらしい そして、この日俺の歩みは止まった でも、君といた数ヶ月で一生分のカレンダーを貰ったよ ありがとう
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