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すると、隣から小さなため息が聞こえてきた。
「玲?」
「…あれは千尋君の優しさでしょ」
「………は?」
なんですと?
優しさ?
あの大魔王に優しさ?
思わず口を開けて玲を見てしまう。
「呆けすぎ」
「だっ、だって!千尋だよ!?あたし千尋とずっと一緒にいるけど…優しくされた記憶ないよ?」
「美夜はさあ、千尋君の近くにいすぎなのよね」
あたしの力説にも玲はため息をつくばかり。
あたしは首を傾げるしかない。
「じゃあ、1つ、教えてあげる」
「へ?」
玲は人差し指を立てると、にっこりしながら話し出した。
「美夜は千尋君と毎日学校に来てるけど、千尋君はあんなに早く学校に来る必要ないの」
「………はい?」
すいません、意味がわかりません。
あたしがぽかんとしているのを尻目に、玲は話を続ける。
「美夜は短大だから毎日1限からあるけど、千尋君は大学でしょ?だから、1限がない日だってあるの」
「……え……と…」
それはつまり、あれですか?
千尋はあたしと一緒に行くためだけに、毎日早く学校に行っている、と?
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