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「あら?ずいぶんと
可愛らしいお客様ね。」
売店でトマスを出迎えたのは
何故か学園の制服の上に
エプロンを来た女性だった。
緩く波がかった
髪を胸元まで伸ばし
柔和な笑みを浮かべている
前掛けのエプロンも
相まって料理人に
見えなくもない。
「ごめんなさいね
昼食のパンはお昼にならないと
売り出さないのよ。」
「いや、食糧が欲しくて
来た訳ではない
ここに蛍火硝子は置いてあるか?」
何故、学生らしき人間が
売店の店員をしているのかは
気になったがとりあえず
当初の目的を優先させる。
「蛍火硝子?
部屋の明かりが切れたなら
寮の管理人さんに言えば
交換してくれるわよ。」
「いや、個人的な事情で
欲しいだけだ。」
部屋の灯りを灯り以外の
目的で欲しいと言うのだから
変な話しだが
売店の女性は後ろの棚から
『業務用蛍火硝子1ダース6セット』
と書かれた箱を取り出すと
カウンターの上に置く。
「それで幾つ必要なの?」
あるだけ…といいかけて
口を閉ざす
何でそんなに必要なのかと
聞かれたら答えられない。
「とりあえずその一箱全て。」
「これ全部?」
「そう全部だ。」
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