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「ここは……」
どうにも薄暗い空間に、彼はいた。
思い出す、自分は腹を刀で刺され、敗れたのだ。その後どうなったかは定かではないが今の状況を見るに、どこに連れてこられたのだろう。
魔力の流れを少しも感じない、そして手は上で拘束されている。何故ここまで落ち着けているのか、自分でも分からなかった。
「初めまして、と言っておくべきか。ゼオ=シェイノメイナ」
「……誰だ」
途端に周囲が明るくなる。どうやらどこかの洞穴らしい。そして声の主と思われる濃紫色の髪をした男の両隣には、自分が交戦した二人もいる。
「私はフォゼンハルト、『アヴィス』の長だ。今回フレンたちに君を連行させたのには訳がある」
「そんなことはどうだっていい。さっさと解放しろ」
「……それはできないな。拘束を解けば、君は我らに牙を向くだろう?」
紫色の瞳が、こちらを捉えて離さない。威圧感などは覚えさせないものの、強制力とかそういった類のものを備えていそうである。
苛々が、募る。
何なのだ、こいつは。
「こんな子供に牙を向かれることがそんなに恐いのか?」
フォゼンハルトと名乗る男の目がギラリと光り、そして大きく見開かれる。恐怖、と認めざるを得ない感情が、ゼオの体を走った。
「ハハハハハ! これはこれは随分と気の強い。――力が、欲しいんだろう?」
フォゼンハルトはそう言って、ニヤリと笑った。
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