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ゼオの眉がピクリ、と反応した。確かに、自分はもっと高みへ行きたい。だがこの男、一体何が目的なのだ。
フォゼンハルトは一歩分だけこちらに近付くと、そのままゼオを右手で指差した。人差し指の先端が、怪しく光る。
「フェインに負け、フレンにも負けた。君はまだまだやれると思ってるかも知れないが――はっきり言おう、お前の力は今のものがピークだ」
「なっ、何を根拠に……!」
「お前は幼い頃から強大な力を操ってきただろう? それは自分の体が御しきれるキャパシティを、優に超えていたとも知らずにな。分かるか、もう限界を迎えているのだよ」
だが、と彼は一呼吸おいて続ける。
「お前が我々と共に来るのなら、力を与えてやってもいい。無論、返答がノーならここで死んでもらうがな」
ゼオは考えた。
自分は何がしたかったのか。力を欲したのはのは何故か。自分はこの世界が憎かったのではないのか。
全ての始まりは、最愛の母を失って“ニケ”を得たあのとき。暫くの自問自答の末、導かれた答え。
自分に必要なもの、それは――。
「――分かった」
「……流石に話が分かる。今拘束を解こう。そして今このときより、我らは同胞となるのだ」
男の高笑いが響く。自由になった手の感触を確かめながら、ゼオはフレン、マナの二人に出迎えられた。
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