呪われた記憶

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『できるかしら……』 雨を降らせられるほどの魔力が彼女に残っているか、疑問なところであるが… 『一か八か、か…』 彼女は心の中でそう呟くと、詠唱を始めた。 ジャイロが彼女の前方に立ちはだかる。 「おや?何を考えていらっしゃるのかは分かりませんが… 果たして上手くいきますか?」 テリーは火炎弾を彼に浴びせた。 彼はとっさに、電気で防御する。 『でも僕が何とかすると言った以上…あんまり魔力を使ってられないな… あー、家業継いでればもう少しマシだったかも…』 「ほう、勇敢なのは認めますが…いつまでもちますかね?」 「ロジーナ!今は集中だよ!!」 火炎弾は大きさを増し、電気の防御壁はどんどん破られそうになっていく。 だが魔力温存のため、直す暇はない。 「も…無理……かも…」 防御壁にできた隙間から火炎弾が侵入し、ジャイロを襲う。 「っ!くっ……!」 だが彼には耐えることしかできない。 そしてロジーナの詠唱もまだ終わらない。 早く…… 嫌…皆がいなくなるのは… キー坊と、約束したのに… 涙を堪えながら、彼女は呪文を唱え続けるばかりだった。 「餓鬼共は…!?」 ヴァロンはすぐさまゲームセンター内を確認しに回ろうとした。 「行かせない!貴方はここで死ぬの!! 残ってる人達もろともね!!」 フィーネの非情な攻撃に怒りを憶えながら、彼は走った。 だが水は彼の走るスピードよりも早く、室内を浸食していく。 たったの数秒でヴァロンの足首くらいにまで水が達した。 すると彼の脳裏を、あることが過った。 キース…ロジーナ…ジャイロ… まだ三人が室内に残っているのかもしれないということだ。
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