366人が本棚に入れています
本棚に追加
『できるかしら……』
雨を降らせられるほどの魔力が彼女に残っているか、疑問なところであるが…
『一か八か、か…』
彼女は心の中でそう呟くと、詠唱を始めた。
ジャイロが彼女の前方に立ちはだかる。
「おや?何を考えていらっしゃるのかは分かりませんが…
果たして上手くいきますか?」
テリーは火炎弾を彼に浴びせた。
彼はとっさに、電気で防御する。
『でも僕が何とかすると言った以上…あんまり魔力を使ってられないな…
あー、家業継いでればもう少しマシだったかも…』
「ほう、勇敢なのは認めますが…いつまでもちますかね?」
「ロジーナ!今は集中だよ!!」
火炎弾は大きさを増し、電気の防御壁はどんどん破られそうになっていく。
だが魔力温存のため、直す暇はない。
「も…無理……かも…」
防御壁にできた隙間から火炎弾が侵入し、ジャイロを襲う。
「っ!くっ……!」
だが彼には耐えることしかできない。
そしてロジーナの詠唱もまだ終わらない。
早く……
嫌…皆がいなくなるのは…
キー坊と、約束したのに…
涙を堪えながら、彼女は呪文を唱え続けるばかりだった。
「餓鬼共は…!?」
ヴァロンはすぐさまゲームセンター内を確認しに回ろうとした。
「行かせない!貴方はここで死ぬの!!
残ってる人達もろともね!!」
フィーネの非情な攻撃に怒りを憶えながら、彼は走った。
だが水は彼の走るスピードよりも早く、室内を浸食していく。
たったの数秒でヴァロンの足首くらいにまで水が達した。
すると彼の脳裏を、あることが過った。
キース…ロジーナ…ジャイロ…
まだ三人が室内に残っているのかもしれないということだ。
最初のコメントを投稿しよう!