呪われた記憶

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「皆…!」 ヴァロンはプリクラの機械がある方へと走った。 そこには誰もいない。 そしてふと入り口が目に入った。 いつの間にか、扉が固く閉ざされている。 このままではゲームセンターが水没してしまう。 「おい!ここにいたらお前まで死ぬぞ!?」 「構わないわ!私はディオス様のためなら命を捨てる覚悟よ!」 …あいつ、そこまで…!? 「またかよ、ディオスディオスって! 自分の意見は持ってねぇのか!?」 「私の意見はディオス様の意見よ! あの方は教えてくれたわ。兄を殺した犯人を…そして私がすべきことをね!」 なっ…? その、ディオスって奴が? てことは、奴が諸悪の根源ってことかよ!! やがて水はヴァロンの膝下辺りを浸し始めた。 時間が、ない。 彼がうろたえていると、微かだがすすり泣くような声が聞こえた。 ふと声のする方を見ると、UFOキャッチャーの近くで7、8歳くらいの少年が泣いていた。 「…チッ!」 ヴァロンは父親の偽善者の血を恨みながら、彼の方へと向かった。 「おい!大丈夫か!?」 「ママ…ママは……?」 「…子供を置いて逃げる親なんていねぇだろ?おそらく外だ。 とにかく、ここから出なきゃな!」 「…でも…どうやって?」 「今はそれを考えるんだ!」 「でも、このままじゃ「諦めるな!必ず方法はある!」 何とか、ここから出る方法… やはりあいつを何とかするしかねぇか! ヴァロンは少年を背中におぶらせると、フィーネの方へと向かった。 前方から大量の水が彼らを襲い、彼女に近づくのを妨げている。 それでもめげずに、ヴァロンはフィーネに近づいた。 「…もう少し…」 少年はただただ、彼の背中を見つめるだけだった。
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