呪われた記憶

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「…おい」 ムーリスの町の病院内。 ネロは溜め息をついた。 「だから俺帰るって言ってるだろ?何でついて来るんだよ?」 「だっ…だってあたしもマイルズも、皆も… あんたに恩返ししたいのよ。何かできることはない?」 ベルデが訊いた。 「そうよ、一時は疑って悪かったって思ってるわ。 結果的にアズっちは助かったんでしょ?でも、それは別の話だわ」 「ね、マイルズ?」と、アメリアが相槌を打たせた。 「…俺は関わるなと言ったはずだ。誰も協力しろとは言ってねぇ」 ネロはまた、病院を去ろうとした。 「…待てよ」 ルジュールが素早く彼の正面に回った。 「あ?俺は忙しいんだ。今からグロリアルに帰らねぇとサニィが煩ぇからな」 「…俺らは借りは返すっていう鉄の掟があるんだ。 このままじゃ気持ち悪いんだよ」 「…………。 俺なんかに関わりたいのか?死ぬぜ、お前ら。クランクシュヴァルツはえげつねぇ奴らばっかりだぞ?」 ネロは四人の顔色を窺った。 四人共、無言で真剣な眼差しで彼を見ている。 「…分かった。ただし痛い目に遭っても俺は一切責任を取らねぇ。 …それでもいいか?」 「痛い目なんて承知の上だ。 でなければプチ・エトワールに手を出す権利はないからな」 マイルズが答えた。 「…なら、プチ・エトワールの鍵について話してやる」 「ま、待って!こんなところじゃ誰が聞いてるか分かんないわよ! 場所を移した方がいいと思うわ」 ベルデが提案した。 「そうだな…グロリアルだと見つかる恐れがあるしな」 ネロがまた溜め息をついた。 「うち、とか。ね?お姉ちゃんいいわよね!?」 「はぁ!?…………。 もう、仕方ないわね」 こうして五人は、ナティーユ家に向かうことになった。
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