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「おらぁバカ娘!今すぐ魔法止めろ!」
ヴァロンはフィーネに近づくと、言った。
「はぁ?嫌よ!」
水はフィーネの下腹部辺りを浸している。
「お前、そんなことで死んでいいのかよ!?」
「もう…私なんか…私なんかほっといてよ!
さっさと死んじゃいなさい!!」
「残念だったな!俺は主人公格だから死なねぇんだよ!
……何でそんなにムキになってんだよ?」
「…………」
フィーネは口を堅く閉ざしている。
「兄貴が死んだ?それが何だよ?
下手に復讐なんかして、兄貴が浮かばれるとでも思ってるのか?」
「煩い…!」
フィーネは彼を強く睨みつけた。
「あんたなんかに私の気持ちが分かるもんかっ!!」
「…あぁ、知らねぇな。だが、一つだけ分かることがある」
「…何よ、それ?」
「俺、小さいときに誘拐されたことがあるんだ」
「…………」
フィーネは再び黙り込んだ。
「4、5歳くらいにな。犯人は俺の親父に復讐しようとした、バカな奴らだった……物凄く逆恨みな理由だったから敢えて言わねぇが。
結局そいつ、どうなったと思う?」
「……知らないわよ」
「即、投獄だ」
「……………」
「まだ小さかった俺は自分が死ぬなんて難しいことなんか考えたこともなかった。
だがあのとき狭くて暗い場所に閉じ込められて、保護されるまでただこう思ってた。
…父上と母上のところへ帰りたい、死にたくない…
…で、結局何が言いたいのかっていうとな」
ヴァロンは半笑いで口を開いた。
「…何も生まねぇんだよ、復讐って。そして…誰でも感じることなんだ。
死にたくねぇって思う気持ちは」
「……………」
「お?まだだんまりか?何か俺ばっか喋ってバカみてぇじゃねぇか」
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