呪われた記憶

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ヴァロンは背中に貼りついている少年を見た。 「…お前だって、まだ死にたくねぇよな?」 少年はこくりと頷いた。 「ほら、二対一だぜ?それでもお前はまだ死にたがるのか?」 フィーネは俯いたまま、黙っている。 「っ……」 彼女の頬から、水が流れ落ちた。 それは魔法でも何でもない、彼女の涙だった。 「死にたくないって…」 彼女は顔を上げ、ヴァロンを見た。 「私のお兄ちゃんも思ったのかな!?それでも…それでも…!」 と、そのままヴァロンに抱きついて泣き崩れた。 「お、おい!お前……!」 そして次の瞬間、浸水は嘘のように掻き消えた。 ヴァロンは少年を下ろすと、フィーネの頭を撫でた。 「な?お前だって死にたくねぇんだ。まだ、未練あるだろ?」 「…ある…」 それから30分ほど、フィーネは泣いていた。 彼女は泣き止むと、ゲームセンターの扉を大きく開けた。 「…ヴァロン皇子」 「皇子なんていらねぇよ。堅苦しいのはごめんだ」 「…じゃあ、ヴァロン」 「呼び捨てかよ…ま、ロジーナも年下だしいいか」 「私、まだディオス様の側にいる!」 「……はぁ!?」 彼女の爆弾発言に、ヴァロンは戸惑った。 「な、な、何でだ!?」 「だってそれが、私の未練だから…」 フィーネは笑顔を見せると、言った。 「ごめんね、感情的になって。 お兄ちゃんを殺したの、ネロ・ネグロリスじゃないんでしょ?」 「あぁ、むしろあいつはキースを助けてやった奴だ。 …会ったら礼の一つでも言っとけよ?」 「えぇ!それから…私、その件はちゃんとディオス様に言うわ! 貴方は間違ってるって!」 「…あぁ、それでいい!」 フィーネはにっこりと微笑むと、ゲームセンターを出ていってしまった。
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