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「…さてと」
ヴァロンが外に出たときには、フィーネの姿はもうなかった。
…あいつ、瞬間移動でも使えるのか?
そう疑問に思いながら、安全を確認して少年も外に出してあげたとき、こちらに向かって何者かが走ってきた。
「おーーい!ヴァロンーーッ!!」
「ヴァローーン!!」
ジャイロとロジーナだった。
「お、お前ら!!」
「はぁ、はぁ…やっと戻れたよ…」
「…怪我してるじゃねぇか!何があったんだよ!?」
「あんたこそびしょ濡れじゃない!何があったのよ!?」
ここで、お互いに遭ったことを話し合った。
「そっか…そういや、ここの係の人達が僕らの戦いに気づいたらしくて、ここにいる人達を全員ホテルに避難させたらしいんだ」
ジャイロが言った。
「なるほどな。じゃあ、こいつの親はそこにいるのか。
取り敢えず送り届けようぜ。話はそれからだ」
「そうね!」
三人は少年をホテルまで送りに行くことにした。
空はもう、既に暗くなっていた。
「…大人しく…いたぶられればいいものを…!」
キースはよろけながらも立ち上がった。
そして通常の彼とは思えないような形相でアッシュを睨みつけた。
赤い瞳がさらに恐怖を誘う。
「…!?」
アッシュが怯んだ隙に、キースはジャケットのポケットから折り畳みナイフを取り出した。
「なっ…何をする気だ!?」
「決まってんじゃん。遊びだよ」
冷たい視線でアッシュに近づく。
「あ、遊びだと!?」
魔法を使えばいいのだろうが、アッシュの身体は恐怖で硬直していた。
「僕、今一番見たいものがあるんだ…
そうだ、それを見せてくれたら大人しくついてってもいいよ?」
「…じゃあ聞くだけ聞こうか?
何、それは…?」
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