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だがそれと同時に、何かが弾けるような音がした。
そして数十秒後、誰かが走ってくる足音と声がした。
「キースーーっ!」
「キー坊ーーっ!」
「どこーー!?」
ヴァロン達三人のようだった。
彼らはこちらに向かってきているのだろう。
「…皆!」
キースは三人の存在に気づくと、アッシュの様子を確認した。
先程の怪我が、また魔法で治されている。
キースは何か思いついたような顔をすると、ナイフで自分の額を軽く刺した。
「!?お前、何を!?」
当然、血が流れてくる。
彼の目にじわりと涙が滲んだ。
「…うっわぁぁぁん!!ヴァロンーーっ!!」
そして、泣き出してしまった。
「…は!?」
「助けてロジーナぁ…ジャイローーっ!」
彼の声に気づいたのか、何やら三人の話し声が聞こえた。
「いっ…今のキー坊じゃない!?」
「もしかして…あんなことやこんなことを「おバカ!!」
「…とにかく行くぞ!」
足音はさらにこちらに近づいてくる。
「…チッ、四対一とかごめんだし…
今日のところは退いてあげようか。君の決意も変わらないようだしね」
アッシュがそう言うと、瞬間移動でその場から消えてしまった。
「に、二度と来るな!」
キースは独り言を呟くと、再び嘘泣きを始めた。
「うっ…うえっ、痛いよ…!」
「キース!」
ようやくヴァロン達がお菓子の部屋に到達した。
だが彼らが見たものは…
イチゴジャムのような返り血の付いたアイスクリームのオブジェ。
乱雑な並びのチョコレートの壁。
穴の開いたビスケットの床…
とにかくぐちゃぐちゃになったお菓子の部屋の惨状だった。
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