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その頃、ベルデは周りの空気を和ませようとしたがあまり上手くいってはいなかった。
「…唯一の手掛かりを消されてしまったということか」
マイルズが言った。
「いや、あるにはあるんだ」
ネロが呟いた。
「何、それ?」
ベルデはそう訊くと、お茶を飲んだ。
「あいつの愛称なら分かるんだ。『ノア』という」
「ノア……?」
「愛称、だろうな。本名ではないと思う。
…あいつは人一倍甘えん坊で、でもマイナス思考だった。そんな記憶がある」
「マイナス思考?」
アメリアが訊いた。
「…何ていうか…すぐ自分を責めるんだ。
そうだな、あと癖は…」
と、再びネロは思い出し始める。
「…たまにぶつぶつ独り言言ってたりするな。ま、元根暗だしな」
「…で…俺らにできることってもしかして…」
ルジュールが呟いた。
「そう、プチ・エトワールの鍵を…
ノアを…探して欲しい」
ネロの言葉は少し震えていた。
「…難しいな。本名も特徴も分からない人間を探すのは」
マイルズが言った。
「あ、だからピンク・ストロベリーに潜入して動きやすいようにしてたのね。謎が解けたわ」
アメリアが言った。
「…………。
よく見破ったな。俺があそこに潜入してるってこと…まだ話してねぇのに」
「…あんたにはまだ何かあるわ、ネロ・ネグロリス。
まだ、隠してることがあるはず」
「…ノアのことか?それなら言ったはずだが………あ」
ネロは何かを思い出したかのように、気の抜けた声を出した。
「何?」
「ノアは…プチ・エトワールの鍵にしてカプトシュヴァルツ家の生まれだ。
分家のクランクシュヴァルツ家がギャーギャー言ってるのはそのためだ」
「カプトシュヴァルツって…あのヤバい家柄のとこだよな?
一家惨殺とか、殲滅とかによく出る…」
ルジュールが訊いた。
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