違和感と洗脳

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村岡さんは鉄格子の隙間を遠くから眺めた。 「私にそっくりな女がいます!その女が、母も、運転手さんも…!」 必死に訴えた。首筋がピンと張って。きっと筋と血管が浮いているだろう。 「この世に自分と似た人間は三人いると言いますが………双子でもないかぎり、ありえませんよ、川知さん。」 「………………っ。」 「失礼します。」 私は声を上げて泣いた。いよいよ、私は嘘吐きの多重人格の殺人鬼だ。 私は、気違いだ。 私は精神異常者だ。 味方はもう、どこにもいない。   そして、何も状況は変わらないまま、秋が過ぎ、冬が過ぎ、新しい春が来た。  
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