違和感と洗脳

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―――――――――― 話し声がする。 まだ体が自由に動かないこともあって、そのまま寝たふりをして耳だけに意識を集中させた。 「自分で呼び出しボタンを押して、我々が駆け付けた時はもう狂乱状態でした。押さえ付けた職員も引っ掛かれたりしまして。」 「しばしばあったのですか?」 「いえ、初めてです。最近は随分落ち着いていましたし、なんら変わった様子もありませんでした。」 「………いつ頃目が覚めますか。」 「直(じき)、とは思いますが。」 「わかりました。ご苦労様です。」 村岡さん、だぁ。久しぶりだな。  やはり寝たふりをしたままベッドの上でそう思った。足音は一度近づいてまた遠退いた。 私はどうしてしまったのだろう。 ただ大学受験のための勉強して、上っ面だけの友達と青春。 あの頃が懐かしい。 戻りたい、あの頃。 「見たんだよ…………アタシが、いたんだ!やっぱり私が犯人じゃない!もう一人の私がっ…!」 いてもたってもいられなかった。  
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