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「そんな事ない、今日もこの前も偶然だよ。」 ひらひらと手を降りつつ否定すると、露骨に溜め息を付かれた。きっと彼女は全てを見切っているのだろう。   陶器のような澄んだ肌。濃紺の大きな瞳。腰までのばされた艶やかな黒髪。 彼女の容姿は、誰もが認めるほどの美しさである。それは同性である自分もが見惚れるほどだ。 その上、気取る事もなくさばさばとした性格であり、とんでもなく頭が切れる。 仲間内ではいつも頼りになるリーダー的存在。   遊女に上がれば、きっと彼女は遊郭最高位である、太夫の地位まで上りつめる事が出来るだろう。   そんな彼女を、鈴は密かに尊敬していた。何をするにも臆病な自分とは大違いなのだ。
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