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「鈴がそういうなら、いいんだけどさ。 明日も早いから、もう一眠りくらいはしときなさいね。」 眉根を下げた彼女はそう言い、じゃあと手を上げる。 わかった、とだけ後ろ背に返答して、ただこの場を離れていく友人をぼんやりと見つめていた。   きっと菜月は立派な遊女になる。 彼女自身もそういう意志を持っている。   だが、立派な遊女とはそもそも何なのか。 そう考える度に鈴は足元が真っ暗になった気分になる。 まるで、この先の未来が途絶えている様。 ゆるゆると鈴は息を吐いた。 自分には到底無理のような気がする。 弱いくせに、自分一人では何も出来やしない生娘のくせに。   未だ遊女になる決心が付かないとは。 往生際の悪い自分に、もやもやと過去を引きずっている自分に、ほとほと嫌気が差す。   私はなんて未熟者なんだろう。   まだ明けそうにない暗闇を、鈴はただ見つめ続けた。
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