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  夢だった。繰り返し見る夢。忘れる事などできない克つての記憶。時過ぎた今でさえ、はっきりと鮮明に覚えている。     元の火種は酒に酔いの回った商人の仕業だと聞く。 一気に燃え上がった火は、同じく商人であった鈴の家を一瞬にして包んでしまったのだ。   偶々父と家を留守にしていた鈴は、ごうごうと燃える我が家を見、絶句し、凍りついたのである。   幼い自分は、どうすればいいのか分からなかった。気が付いて母を助けに行こうと思った時にはもう、幾人の人に止められていた。
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