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「あ…」
俺は交差点で足を止めた。
「やっと見つけた」
そこには愛しいさゆみの後ろ姿。
「さゆみっ!」
俺は遠くにおるさゆみに届くように、精一杯の声で名前を叫んだ。さゆみは俺の声に気付いたのか、振り返ってキョロキョロしとる。
「目、腫れてるやん…」
遠くからでも分かった、泣き腫らした真っ赤な目。
あ、やっと目合った…
振り向いた交差点で俺の事を見つめてる…ただそれだけやのに愛おしいくて抱きしめたくて、俺はいつの間にか走り出してた。
「忠、義…?」
さゆみは大きい荷物を片手に持ったまま、俺を目の前にすると俯いてもうた。だから俺は、何も言わんとさゆみんを抱きしめた。
いや、ちゃう。何も言えんかったんや。さゆみはびっくりして離れようとしたけど、俺はさゆみを離さんかった。
もう、離したくなかった。
それで一言…
「好きや」
そう言うた。
さゆみは関西弁が嫌いや。けどそんなん関係あらへん…
「むっちゃ…好きやねん…」
やってこれが俺の精一杯の愛情表現やから。だから変えたりせえへん。
本間は行かんとってほしいとか、側にいてやとか、ごめんな?…とか、他にも色々言いたい事はあったけど、
今の俺には“好きや”のたった3文字しか出てこやんかった。
「来るの遅いよ…馬鹿忠義っ」
さゆみはそう言いながら俺の背中に手を回し、子供みたいに泣いとった。これが大阪の街、心斎橋でしたさゆみへの二度目の告白。
俺らはそのまま手を繋ぎ、またあの観覧車に乗りに行った。
やっぱり今日も神戸まで見えた夜景が、本間に綺麗で…
俺は泣きそうになった。
end.
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