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「おはよう、翔梧」
制服に着替えてダイニングに入ると、幼馴染みの叶翔梧(かのう しょうご)がご飯を食べていた。
翔梧は、うちから道路を隔てた向かい側の高層マンションに住んでいる。
両親が早くに離婚していて、父親がフォトグラファーという仕事柄、あまり家にいないことから、うちでよく一緒にご飯を食べている。
「おはよう」
トーストを囓りながら、翔梧がぶっきらぼうな挨拶を返してくる。
翔梧は漆黒の髪に漆黒の瞳が印象的な、誰もが振り返るほどの美形なのだが、いかんせん誰に対しても愛想がないせいか、いつも周りから遠巻きに見られている。
幼馴染みの自分から見れば、それは周りとどう接していいのかわからない不器用さゆえの態度なのだが、周りから見るとその態度は近寄りがたくみえてしまうらしい。
(ホント、損してるよな、コイツ)
不器用な幼馴染みに、思わず幼い子供に向けるようなまなざしを向けてしまい、翔梧とバチッと目が合ってしまう。
「奏(かなで)、そんなとこで突っ立ってていいのか?学校、遅刻するぞ」
食後のコーヒーまで飲み干した翔梧に言われ、時計を見ると8時半を回っていた。
予鈴まであと10分しかない。
いくら学校までが近いといっても、これ以上のんびりしていると遅刻する。
「そういうことは、もっと早く言ってよ!」
「朝の忙しい時に、ぼぉ~としてるお前が悪いだろう?」
……確かに。
結局、俺は学校までの道程を翔梧と一緒に走る羽目になり、予鈴ギリギリで正門に辿りついた……。
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