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俺の通う栄和学園は、幼等部から大学部までエスカレーター式の有名私立学校だ。
都心から少し外れた所にあるせいか、有り余る自然と広大な敷地面積を誇っている。
俺と翔梧は通い慣れた高等部へ続く道を猛ダッシュで走り、本鈴ギリギリで教室にすべりこんだ。
「あれ?意外に余裕?」
いつも時間に正確な担任がまだ来ていない。
横でボソッと、そんなわけないだろ、とツッコミを入れた翔梧をあえて無視していると、前の席に座っていたクラス委員の賀川(かがわ)と目が合った。
賀川はにっと笑って、
「おそよう!遅刻ギリギリに来たお前らにビックニュースがあるぞ!」
「……おはよう。ぐたらない嫌味はいいから、ビックニュースって何?」
よくぞ聞いてくれました!とばかりに賀川が喋り出す。
「実はこのクラスに転校生がくるらしくてさ」
「は?」
俺は思わず真顔で聞き返してしまった。
一貫教育を基本としているこの学校は、よほどの理由がないかぎり学期途中で他校生を受け入れることはない。
しかも高校2年の秋という中途半端な時期に……。
「賀川は、その転校生見たの?」
「ああ。今日、日誌を取りに職員室に行ったら、先生と話してた」
「ふ~ん。男?それとも女の子?」
やっぱ、お前もそこが気になるんだな、としたり顔で賀川が口を開こうとした瞬間、教室の戸が開いた。
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