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『アァアァァアァアァァアッ!』
耳を劈くような叫び声をあげ、天を扇ぎ、のけ反るようにして倒れ、ベキベキと音を立て少女の形をした器から黒い羽根が足が生え、元の姿などは無くなっていた。
アテナの記憶はそこで途絶え、いつも地下牢の冷たく硬い感触で目覚めるのだった。
『…ゆめ…?全て…夢だったら良いのに…』
些細な願いは治りきっていない身体の激痛で振り払われるのだった。
痛い…。
そんなときにいつもマーチャライアの声が聞こえないか探してしまうのだったが、聞こえてくるのは他の家人の声だけだった。
『昨日の姿見たかよ?おっかねぇな…。』
『早くくたばっちまえば良いのなぁ?』
『ばっか…そんなことになったらお前、俺達が死ぬことになるんだぞ?』
『…でも、この化物…一緒にいた仲間すら殺しちまったんじゃねぇか!』
『まったく…厄介な化物だぜ。気持ち悪りぃ。』
何故?この国を守っているだけなのに?
あんな痛い思いをして?
化物?よく言う…。戦場に行くときはアテナ・アテナともてはやすくせに!
…痛くない…こんな傷…痛くない…。
まだ俄かに龍の形を残したまま、瞳から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「マ…マーチャライア…っ…助けて…っ」
泣き続けるうちに身体は普通の少女に戻っていた。
小さくうずくまりただただ泣く姿は、とても心細いものだった。
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