序章

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国王はただ頷いた。そうするしかできなかった。   龍はその返答を見て笑っているようだった。   『…私モ長イ時ヲ過ゴシ、コノ身体ニ限界ヲ感ジテイタ。ソコデ私ニ新シイ身体ヲ用意シテハクレマイカ?』   「…新しい身体とは?」   『王ヨ、オ前ニハ間モナク子ガ産マレルノダロウ?ソノ子ハ忌ミ子トサレル双子ダ。ソノ片割レノ額ニ龍ノ贄デアル紋章ヲ刻ンデオコウ。』   「それだけで良いのか?」   『フフ…。ソノ贄ノ心臓ニ我ガ心臓ノカケラヲ埋込ムガ良イ。タダシ、身体ガモタナイヤモ知レヌ故、ソノ子ガ五ツノ歳ヲ迎エテカラ術ヲ施セ。ソノ子ハ我ト対ヲ成ス程ノチカラヲ得ルデアロウ。』   「分かった…。」   王にとって子供を贄にすることなど国を守ることに比べれば安いものであった。ましてや、忌み子とされる双子の片割れならば…と。   その二月後に産まれた子は龍の言った通りに双子で、片割れの男の子の額には何も無く、女の子の額にはなにやら痣が浮かび上がっていた。   ここでも王は安堵した。世継ぎとなる男の子には何も無かったのだから。
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