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書き終えた俺はその紙を二つに追って、父さんに渡す。
「これを母に…」
父さんは受け取ると少し笑った。
「覚えていたのかい?」
「はい。だから、この日に来ました」
俺はボールペンをしまって立ち上がる。
「もう、夕方だから、そろそろ帰ります」
「朔夜、せっかくだ、萩原に泊まっていかないか?」
父さんがにっこりと笑い俺を見た。
俺は直ぐにクスッと笑って言う。
「いいえ、いいです。家で煩い家族が待ってますから」
俺の答えにキョトンする父さんだったが、直ぐに意味が分かったのかクスクス笑い出す。
「そうだね、今日は早く帰りなさい。みんな心配してるよ…」
萩原一家を出て、俺は家へと戻る。
自然と早足になるのが可笑しい。
俺は、俺をここまで動かしてくれた彼女にまだ言ってない言葉がある事に気付いた。
「朔夜兄さん、」
突然、呼ばれて振り返ると、あの子…花梨が立っていた。
「あの婚約者に伝えて欲しい事があるの…」
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