壱~その男、永巳新八~

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今でも思い出すと背筋が凍るような感覚が襲ってくる。 「思い出したくないな」 「なんか言った?」 「いや…」 新八はちらり、と例の記事を見た。 吉田 秋都。 彼が何故姿を消したのか警察もわかっていない。 ただ、机には一枚のハガキが置いてあったという。 季節はずれの紅葉が描かれているハガキにたった一言。 『未来を変えるために、過去を変えるために』 謎の疾走を遂げるに相応しいセリフだと記事に書かれていた。 もう、彼とは試合は出来ないのであろうかと思うと、新八は少し寂しくなった。 しかし、あの目は二度と見たくない。 「おっと、もう道場にいかなきゃ。部長に怒られるよ」 「うわっ、やっべー俺と新八着替えてねぇじゃん」 「5分で着替えられるだろ」 「そうだけどよ」 朝練に必要な物を持ち、3人は教室を出た。 総太の机に置かれた新聞は、開いている窓から入ってきた風でハラハラと捲れ、例の事件が書かれているページで止まった。 まるで、風がこの記事が何かあると伝えているようだったということは、まだ新八ももちろん、日本も世界も知らなかった。
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