壱~その男、永巳新八~

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けたたましく耳元で何かが鳴っている。 新八ははっきりしない頭で、それが昨日セットしておいた携帯のアラームだと認識する。 「…浅黄色」 その色は青と言えばそうかもしれないが、正しくは緑を帯びた薄い藍色。 ここの所、新八はこの夢しかみないようになってしまった。 誰かが己の名を呼ぶが、それが誰なのか分からないし、しかもその人は全く己に危害を加えない。 なんとも奇妙な夢だ。 そうしてその“誰か”は浅黄色の服を翻し、消えていく。 気がつけば朝になっているのが毎回のパターンだ。 最初は気にもとめていなかったこの夢。 しかし、さすがに毎日みていると気になってしょうがなくなった。 この夢は何かを予感させているのではないかとも思えるようにもなってきた。 新八は少なからず、そういうのを信じる人物だからだ。 毎日“誰か”を観察している。 この夢ははっきりと覚えられるからだ。 今日分かったことがあった。 “誰か”は己と同じ位の男だということ。
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